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西宮市の内科|石塚ファミリークリニック-院長ブログ|43 人生の岐路

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43 人生の岐路

人は生きていく中で必ず岐路に立つ。岐路に立つのは悪いことではない。岐路に立つときは、自分自身について真剣に考えている時でもあり、むしろ僕はよい時間だと思っている。
岐路は人生のトランジションである。トランジッションとは、日本語で“過渡期”という言葉に当たる。
日本では、毎年3月は進学、就職、転職、所属する組織内の変化など多くの人が新しく環境を変えることが多い時期でもある。変化は人生に欠かせない体験である。


人生の岐路イメージ僕も開業に至るまで多くの過渡期がありました。
まず、医師となり2年間母校の大学病院で研修をしてからの3年目に、私以外の同級生は当時、所属する医局という病院の系列病院に全員が就職していったのだが、僕は関東の大学病院を選択してその希望を上司の教授に申し入れをして許可をもらい、東京は三鷹市の杏林大学病院に就職した。
そのトランジションには自分なりに明確な理由が三つあった。
まず、当時、母校にはなかった膠原病や腎臓病の専門講座がなく、たまたま所属する教授がその専門の杏林大学の教授を招いて招待講演を行い、その時に強く興味をかきたてられたこと。
もう一つは関連病院に行くと母校出身の医師がほとんどであり、自分が研修医としてどの程度の医師の力を持っているのか判断しにくくなるような気がして、他大学や病院の研修医と混じりたいと思ったこと。
あとは、勤務先が東京で単純に憧れていたことでもある。
その後、東京で過ごしながら静岡や埼玉で病院勤務をして、次に渡米して3年間、医学の基礎研究を行いました。帰国後は再び東京の杏林大学に戻り数年間勤務して、実家の関西に帰り、医師になり15年後に現在のクリニックを開院して今に至っています。
医師になったときにはこの西宮で開業することは夢にも思っていませんでした。
転居だけを言うと、5年間で7回の引っ越しの経験もあります。

人の生涯にはたくさんの節目がありその節目ごとにトランジッションがあります。

今思うと、トランジッションで大切なのは就職や転居といった“外的な出来事”ではなく、“内面の再方向性や自分自身が再構築すること”であると思います。つまり、状況が変わるのが変化であり、その変化によって心理的に変わるのが本当のトランジッション(過渡期)で思う。
私も初めは、母校を離れ一人だけ東京に行く決心をするのは不安が常に付きまといました。今と違って、研修医のほとんどが母校の医局の所属病院に残る時代だったので、研修が終了し他の大学病院に移るのであれば、その大学を卒業した方が良かったのではないか、全く知らない大学病院の3年目の医師をその大学は受け入れてくれるのか、誰一人友達もいない土地で自身のメンタルが持つのかなど不安は尽きなかったように思います。
新しい環境幸い次の職場で新しく出会った先生も皆親切で温かく迎えてくれて、専門の膠原病や腎臓病も自分の興味が尽きることなく仕事を充実させながら上司、後輩などにも恵まれて今ではあの時の判断は良かったかなと振り返ることができるようになっています。

自分の経験から言えることは、人生の転機を迎えた時に“どうすれば新生活をうまく送ることができるか”と考えがちです。しかし、大事なのは、いかにこれまでをうまく終わらせ、区切りをつけるかだと思います。
僕も東京で就職した当初は関西の病院で働いていたらどうなっていたのだろう、同級生が母校の先輩の先生と楽しく働いているという知らせを聞くと、気心知れた先生と働いていて楽しくていいなと考えていましたが、ある時、叶わないことを諦め、その気持ちに区切りをつけようと思い、今からのことだけを見て、新しい環境の中で小さな目標を立てることを目指すようにしました。
例えば、自分の考えをできるだけ多くの人に聞いてもらうために直属の上司だけでなく他科の先生にも自分から話してその人を知り自分もしってもらう。自分の仕事ではないけどなんでも顔を出しできることは仕事を見つけていくようにしました。

当時、5年目ぐらいになると膠原病、腎疾患の重症患者は集中治療室(ICU)に入り主治医が当てられていました。僕自身3年目ではあったが、主治医の先生と一緒にICUに行き、行動を共にして所属長の助教授に1日でも早くICUの主治医をさせてほしいと懇願していました。
また、医局での飲み会は絶対に断らない、100%参加など単純なことでありましたが、自分を知って理解してもらうことに専念していくことで半年ぐらいたつと、関西時代の病院勤務のことを懐かしく感じることとなり、自然に今の環境や人間関係に慣れていく自分を受け入れることができるようになりました。
このことを考えると、変化が起きるとういことは、まずは何かが終わったこと。
つまり、トランジッションでまず、最初に体験することは“終わり”を受け入れるとういことが大切です。それまで自分がいたステージから旅立つときが来たとうい事実を受け入れることで、トランジッションの心理的プロセスがスタートしていくと思います。
属していた安全な環境を失うことは不安で悲しみを感じることもあります。
予想外の形で変化が起きた時には、驚きと共に怒りを感じるかもしれません。何かが終わったということは、状況が変わることで何かを失うことでもあります。しかし、始まりの前に、まずは終わりがあって、終わりは過去の習慣や考え方を取り除くプロセスとなることを理解しすることが重要です。

 

自分の在り方がスタート僕は、変化が必要だと考える時はいつも、“何かを得るときには何かを失う”と心に言い聞かせます。同時に“両方得るのは虫が良すぎで、欲張りすぎだ”と思うようにしています。
過去を決別しその心の切り替えが、新しい状況に対応していくことになりますが、まず、過去は過去と、流れに身をゆだねて変化に逆らわないこと、そこから新しい自分の考え方を見つけていくことです。そうすれば、ある日、ようやく“居心地の悪さから抜け出せたかも”と感じられる瞬間を迎えることができると思います。
ここで自分の在り方がスタートしていきます。その時は、ゴールではなくはじまりです。
変化はほぼ完了し迎え、シフトした新しい波動で、新しい自分でこれまでの体験で得た知識を使って人生の転機を終わらせ、人生を勧めて行く時期の始まりです。その時の自分に自分自身におめでとうございますと言ってあげてみることもできます。トランジッションはさらに続く人生の旅路をさらに豊かにしていくことができるチャンスでもあると思います。

 

令和6年3月:石塚ファミリークリニック 
院長 石塚 俊二

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