12 SNSと在宅診療
LINE、Twitter、FacebookなどSNS(Social Networking Service)は字のごとく、コミュニティ-で使用されるものでコロナ渦をきっかけに当院でも昨年より利用しています。
LINEは興味ある患者さんに当院の公式LINE登録をしていただき、医院の直近の情報や新型コロナワクチン接種予約などを公開したり、また、LINEによるオンライン診療にも利用しています。
Twitterはクリニックでの日常の出来事を中心に受付、看護師など各人が自由に思うことをつぶやいています。
Facebookは比較的、当院の専門である腎臓病、リウマチ、膠原病などの診断や治療に関連することを患者さん向けに情報を伝えています。SNSによるコミュニティによってが、それぞれの役割を持ち多方面からの情報を発信して生活の中での医療に役立てることを目的としています。
SNSでの情報発信は、SNSを利用している人にしか届きません。一方、利用している人は、本人が検索などしなくてもコミュニティの人やクリニックが情報さえ発信さえすれば、その情報には暴露されるわけです。つまり、SNS利用者はそのクリニックの情報をしっかりと得て受け入れやすくなります。実際、診察中に“先生、LINE読んだよ”とか、時には“あの話はどういう意味”と質問され診察がSNSの話題で盛り上がることもあります。
このように通信機での診察や患者さんへ直接の情報伝達が可能になり、診察の幅が広がり今まで診察室以外では遠くに感じられた患者さんといつでもどこでも身近につながっていると感じることができるようなりました。
とりわけ、SNSの威力を発揮していると考えるのが在宅診療についてです。在宅診療は、これまで月に1~2回程度定期的に訪問して患者さんや家族から話を伺い状態を診察し、投薬を行うことが日常でした。
時には、発熱し体調が変化しても患者さんのほうが自身で判断し訪問看護や医師に連絡することに躊躇し、その結果、状態が進行していることも稀にありましたが、SNSを使えばその情報が簡単に素早く得られその治療がより早くできるようになりました。
当院では、初めに在宅患者さんやご家族には当院の公式LINE登録をお願いし、クリニックの携帯電話より公式LINEのチャットを利用し、また、各訪問看護の看護師さんともLINEやショートメールで連絡し合うようにしています。
私は、このクリニックの携帯電話は、外来診察中も常に診察机に置いており、実際、看護師さんからメールの患者さんの状態、褥瘡などの皮膚症状での画像など医師と相談したいことがあればすぐさま情報を送ってもらうようにしています。外来診察中でも、その連絡を確認、相談し、その後の投薬や処置や場合によっては病院紹介などの対応が迅速にできるようになりました。また、患者さんや家族にはLINE診療で連絡し自宅での表情を確認しながら会話ができるようになり、医師は、まるで外来診察のような感覚で診療ができる利点が得られるようになりました。
例えば、患者さんや家族も急変時は医師への連絡をするが、少しの状態の変化では連絡を遠慮されることもありました。しかし、実際はちょっとした体調の変化、ショートステイ前の注意事項、在宅機器の取り扱いなど、日常においてはふと相談したくなることのほうが多くあり、このような時に電話ではなくてもショートメールやチャットで書き込みだけをしてもらい情報を交換してもらうことでお互いの安心感にも繋がり、さらに連絡し合う垣根もかなり下がったのでは思います。
もちろん、SNSでの連絡や状態の把握には限界や誤解もあります。例えば、患者さんの状態でショートメールやチャットなどの内容の理解をこちらが深く読み過ぎたりすることで、より重症に考えつながるまで何度も家族に連絡してしまい、“患者さんのこどもを連れて公園に行っておりました”“今日は連携病院の受診日でしたよ”と言われたり、在宅物品の補充が必要とあり、すぐに用意しなければと考え、自宅に持っていったら“数を間違えていました”など直接話さなければ、はっきりしない表現や通信機器では判断できない状態もあることは事実です。
しかし、これまで患者さんが定期訪問を受けているものの、医療介護者間の情報共有が十分にされていない人や、訪問の頻度が少ないために、次の通院までの長期間、医療側によるフォローが十分受けれない在宅患者さんもおられました。
これらが、SNSの利用により患者や家族、医療介護者が症状や体調をリアルタイムで変化を共有し、相互に確認することでより良い治療サポートにつながっていることは喜ばしいことだと思います。
私も決して若いと言えない年代の医師であり、SNSの操作方法に戸惑い、難しく感じることもあります。
また、在宅治療の基本は対面診察での治療であり、患者さんの心をより深く感じることは対面診察に勝るものはないと信じています。ただ昨今、SNSが在宅診療にも一部を確実に担ってきていること実感し、この方法が在宅医療によりよい方向に進んでいくことに医師としての責務であると思いながら試行錯誤を繰り返し訪問診療にあたっています。
著者:いしづかクリニック
院長 石塚 俊二