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西宮市の内科|いしづかクリニック-院長ブログ|25 在宅診療の奥深さ

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当クリニック院長 石塚俊二が医療を中心に情報発信
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25 在宅診療の奥深さ

昨今、新型コロナウイルス感染症が流行して数年となりその診療の真っただ中にいますが、最近、特に在宅診療の奥深さを実感しています。
本来、在宅医療は病気や障害などで身体機能が低下しており通院が難しくなった時に、退院後も自宅等で継続的に医療を受けることを言います。

 

自宅療養する患者さんのイメージイラスト一般的に医師が定期的に訪問する“訪問診療”の対象患者さんのデータでは利用する患者さんは、
1)85%以上は要介護状態
2)基礎疾患は多様だが、循環器疾患、認知症、脳血管疾患や、末期の悪性腫瘍や人工呼吸器、胃瘻増設など医療処置を必要とする重症度の高い患者さんが多く
3)約8割は家族と離れて暮らしている
というデータがあります。

これら自宅で療養されている患者さんの要望や意向を尊重する“患者さん中心医療”が在宅医療の本質であります。言い換えると、必ずしも治療が目的ではなくその人らしく療養できるために環境調整をしていくということです。

 

療養することが主たる目的であり在宅医療のゴールは患者さんそれぞれです。
例えば、最近の新型コロナウイルス感染症の治療の際に在宅医療の有用性を強く感じました。在宅療養中に不幸にもご家族さんやデイサービス、ショートステイなどの利用者や医療従事者より罹患する場合も少なくありません。
この場合、患者さんへの病院受診の手続きをするより、訪問診療によって自宅に伺い、確定診断して訪問看護師と連携し自宅での経過を観察し、訪問薬剤師よりの薬剤指導、配達などでよりきめ細やかな治療を実践することで、入院することなく、この新型コロナ感染症に対してもこれまでの在宅療養の延長として自宅で治癒、改善されることも在宅医療の優れたことだと思います。

 

今、新型コロナウイルス感染症の患者数増加にて救急搬送ができず要請後より数時間も待たされ搬送先が見つからないケースもでていますし、また、入院後もコロナ感染の影響で家族の面会も制限され、家族には会えずに本人の希望した治療が実施されないことも余儀なくあります。
在宅医療では、病院での治療が自宅での治療を勝ると考えられることが多く、その為に在宅医療の継続を諦めて家族が入院を考えることもよくあることですが、今回の新型コロナ感染症のように在宅治療の方が迅速かつ適切にできる場合もあるのです。また、新型コロナウイルス感染症では、本人以外の家族内発生の場合も相談を受け、臨時に往診をして診断、治療を行える時もありました。

 

新型コロナウイルス感染症の在宅医療においては、

1)早期診断をして感染症を自宅に持ち込まない、広げない

2)感染した在宅患者さんを必要に応じて自宅で安全に支援する

3)最後まで生活の場所で過ごしたいと人が、苦痛や不安なくすごせる
などを実践できることを実施することができ、在宅医療はその力を発揮します。

 

また、自宅で治療継続し、救急搬送し治療や処置を望まないという患者さんの意思決定は生活を共にするご家族の介護力にも大きく影響します。例えば、家族ができる医療の補助行為もその一つです。
「自動血圧測定」「パルスオキシメーター装着」「座薬挿入」など普段からご家族さんが行うことができれば、在宅患者さんが新型コロナウイルス感染症など他の病気の治療に対しても役に立つことが多くあります。

 

訪問看護ステーションのスタッフのイメージイラスト

今後も感染症を始めとした色々な新しい病気が世界をかけめぐる可能性もあります。在宅医療は、患者さんの意思と尊厳を中心として家族や医師、看護師、薬剤師など多くの人が携わり、今後将来に苦難な医療状況に陥っても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるような“地域包括システム”といわれる仕組みを作る必要があると思われます。
自宅で療養を希望する方は多く、療養先として自宅を挙げる人は60%以上と言われ、在宅医療の必要性が言われております。しかし、自宅で亡くなる方の割合は13%程と言われ他国と比較しても病院で亡くなる方が依然として多いと言われております。新型コロナ感染症ごときに負けず、自宅で療養されている患者さんが、家族のいる家で療養するのは当たり前となるような在宅医療観になればと良いなと思います。

 

著者:いしづかクリニック 
院長 石塚 俊二

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