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28 長~い付き合い

患者さんの中には風邪などで年に数回来院される方もいれば、高齢者で毎日のように診察に来られる方もいる。
毎日のように来られる患者さんと付き合いが長くなればなるほどその患者さんの病気だけではなく、家族や友人や生活背景など詳細にその患者さんというより”人としてその人”を理解することができる。
朝から夜遅くまで仕事をしている私には、家族との時間よりこれらの患者さんたちと過ごす時間のほうが多くなっているときもある。毎日、顔を合わせているとその人が診察に入ってくる動きや表情によっても体調や気分の落ち込みなど察知することも多い。

 

医師と高齢患者さんの診察風景のイメージイラスト

例えば、ある一人暮らしの高齢の患者さんは、いつも「先生、両足の裏がしびれる、食欲がない、足が弱って歩くのがつらい」と必ず3つの不調を訴える。しかし、よく話を聞いてみると毎日4000歩は近所を散歩しているという。しかし、毎回、診察時には必ずこの”3つの不調”を言われるのでこの言葉と散歩の程度を聞くことが、この患者さんの元気度を測るバロメーターとすることができると長年の診察でわかるようになる。
そして必要のないと思われる検査は省き、診察は患者さんとの会話だけに集中することで患者さんの健康を維持することができる。
時には3つの症状以外の4つ目、5つ目を訴えることがあるので、それがあれば体調の変化として検査を行うことを考える。これも毎日、長く顔を合わせているからこそわかることでもある。

 

また、別の高齢の患者さんはお孫さんと暮らしており、お孫さんのこともいつも楽しく話す。
「先生、孫が海外に仕事に行ったよ。孫にプレゼントをもらったよ。」などお孫さんの成長が自分の生きがいでもあるようだ。そのお孫さんのことを話す量が減った時は、必ずと言って体調を悪くする。
その時は、私は「お孫さんが帰る時には元気にならないと」などお孫さんの話を通じて、診察、検査を行い、本人の治療を励ましていく。これも毎日話しをているからこそわかることで、この場合は治療していく上で患者さんの家族背景を知ることは必須となる。


在宅医療のイメージイラストもちろん長い付き合いの患者さんが厳しい病気に置かれる場合もある。
先日、ほぼ毎日来院されリハビリを行っていた方が終末期となった。その患者さんは元気な時は、月に数回は大阪まで趣味の詩吟に通うことが日課であり、「この前、大会にでて緊張したわ」「今回は喉の調子が良くて上手く声が出せたわ」などいつも穏やかにゆっくり話すのが特徴的でした。
その穏やかさに心を掴まれ、僕もこの患者さんと話しをすることで癒される時間を過ごしていました。
その後、来院が困難となり自宅での在宅医療に切り替えることになりました。
自宅に往診にいくと話す内容はかなり少なくなったが、いつもの穏やかさとニコッとする表情は普段と変わらず、その表情が持続しているのであれば無理な投薬はせず経過を見ようと決めて、できる限りのお話しを続けていました。
痛みが出現してもおかしくない状況でもその穏やかな言葉と表情は保たれ、結局、最後まで強いお薬は使用せず天寿を全うされました。

長く付き合うことでお互いに薬は必要ないねと理解し合えたようでもありました。

 

また時には、高齢の患者さんだけでなく、年に数回の来院でも長く付き合うことで分かり合えることもあります。
幼少時から時々診ていた、ある若い女性の患者さんが来院されました。

現在は社会人となり就職をして人間関係で悩んでいるようで診察に来られました。
まずは、幼少時から大学生となり社会人まで診ている患者さんが相談してくれたことが正直嬉しく思いました。
正直に医師としての意見を述べることができるし、また、小さい時から診ているのでその性格や環境も多少なりとも理解しており、診察以外の相談にも対応しやすく感じた。月日が診察を応援してくれていたと思う。

 

現代は、1億総孤独と言われ、毎日が目まぐるしく変化する社会であり、慌ただしく人と人が出会い、別れがあり、時には不幸な人間同士の事件や事故が、家族間でも生じることがある。
この世の中で自分が他人と自然体で長く付き合えることは貴重で大切なことである。
特に医師にとっては患者さんと長く付き合えることは至極幸せなことだと思う。長く付き合えることでマイナスとなることは一つもない。
患者さんである人と長く付き合うことで大切なことは、医師として患者さんの言葉を受け止める寛容さを持ち、自分の気持ちを正直に伝え、患者さんとより多くの会話をする。そうすることで医師と患者さんもお互いが自分を出し自然体で付き合えるようになると思うし、その時間が長ければ長いほどその二人にだけ理解できる人間関係が形成されていくのだと思う。
人の一生は限られている。もちろん医師として患者さんと向き合える時間も限られている。
医師である限り患者さんの心の叫びにしっかり向き合い、受け止められるように患者さんと長く付き合い、より深く知りながら診察に明け暮れたいと思う。

 

令和4年11月:いしづかクリニック 
院長 石塚 俊二

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