医療法人社団ファミック
いしづかクリニック
web予約をする
TEL予約・お問合せ
0798-44-3315

西宮市の内科|いしづかクリニック-院長ブログ|35 在宅診療アシスタントとともに

院長ブログ
いしづかクリニックHOME院長ブログ一覧35 在宅診療アシスタントとともに

院長ブログ

当クリニック院長 石塚俊二が医療を中心に情報発信
一覧ページを見る

35 在宅診療アシスタントとともに

訪問診療には医師をはじめ、看護師、歯科医師、薬剤師、ケアマネージャー、ヘルパーなどさまざまな職種が関わっています。私の訪問診療では、昨年より訪問診療アシスタントとして当院の受付さんと同行して往診を実践しています。
訪問アシスタントは患者さんや家族さんの希望を医師と違った立場でヒアリングして自宅診療を支える活動を行う専門職です。この訪問診療アシスタント職務のおかげで訪問診療の内容の充実度は、はるかに上がっていることを実感しています。

訪問診療に関わるあらゆる職種のイメージイラスト

 

その主な仕事は

  1. 医師の診療同行
  2. 訪問診療の準備
  3. 診療スケジュールの管理や移動ルートの確認
  4. 医療物品の整理、補充
  5. 入院先の病院の調整や近隣の介護事業所など関連事業所への報告
  6. 直接的な患者さんや家族の希望の聞き取りや相談

などがあります。
特に患者さんや家族や他の職種との橋渡しの役割として担っていることは在宅診療を行う中でも中心的業務の一つで重要な仕事となっている。ともすると在宅診療が開始時からどうしても医師と訪問看護師だけで治療方針が決定し、それを家族に伝えていくだけになる場合が多くそれ以外の有用な情報が吸い上げられないときも時々あります。

 

先日、17年間往診に伺っている患者さんの介護者であるお母さんが患者さん以外のことで介護に影響を及ぼすほど悩んでいたことがありました。そしてその個人的な悩みは3年間徐々に増えていたとのことであった。
残念ながら私自身は毎回の訪問診療で母親に会って、少しやせたようだな、疲れているのかなという印象はあったがそこまで深い悩みがあるとは気づかず、それに対しての思いを察することができなかった。
毎回、患者さんの状態を伺い、訪問看護師の報告を聞き患者さんの状態が落ち着いていれば、家族の心も落ち着いていると思っていたようである。しかし、実際はそのことで苦悩に満ちその気持ちを持ちながら患者さんの介護を続けていたと思うと私の心はとても切なかった。

 

その事実を母親から聞いた後に同行する訪問診療アシスタントとそのことについて話すようになり、毎回、「今のお母さんの状態はどう思う」「お母さんはどうしたいと思う」「この言葉を投げ掛けようと思うけどどう思う」など相談することが日課となり、2人であれこれ考えや案を出し合うようにすることにした。
また、同行する受付さんが直接お母さんに話をしてその心境を伺い、時には、「先生、看護師や薬剤師に連絡して直接聞いてみましょうか」など他の職種との連絡や聞き取りなどもしてくれることもあった。
その内には、お母さんも医師の僕自身に話しくいことでも受付さんに相談してくれることも多くなり、その後、少しずつではあるがその解決を探れるようになってきた。

 

今まで一人ですべてを担っていた訪問診療がもう一人訪問に携わる人が加わり話し合うだけで診療の在り方や家族の考え、他の職種との連携もより円滑に動くようになり僕自身も相談しながら訪問に携われるようになり、自身が困った時に気持ちも楽になった。

 

家族と話をしている訪問診療アシスタントのイメージイラスト

他にも先日、癌末期の患者さんの治療について2人で話した。
患者さんの介護は高齢の妻と娘がおこなっているが、奥さんの心労も非常に強くなってきた。
本人は在宅治療を希望しているが、奥さんへの遠慮もありあまり本当の気持ちを表そうとしない状態が続いた。
緩和ケア病棟への入院が環境的には望ましいと考え一度受診してもらうことになった。
この時にも、訪問時に今後についてどのようにするのが治療的に最善か奥さんと娘さんに医師より説明した後にも、そのこと以外で心配する娘さんに受付さんよりさらに説明をしてくれ、医師にはなかなかできにくい細かな質問にも丁寧に説明してくれた。

 

外来では診察室内に医師と看護師だけであるが、在宅診療では異なる時間帯で医師、看護師、薬剤師、ケアマネージャーなどが患者さん、家族など別々に話しをすることが多い。この為、その内容をまとめるのは容易でないことが多々ある。
また、患者さんや家族の中ではなかなかその本意を伝えることを遠慮され、話さないままである患者さんや家族もいる。
訪問診療アシスタントはその存在が患者さん、家族により近いと考えることもでき、主に携わる医師や看護師と患者さん、家族の懸け橋となり在宅医療がよりよい方向に進むキーパーソンとなることも多くその仕事の意義は大きいと思う。

 

医師が往診だけで患者さんの気持ちをすべて把握し理解できると思うのは浅はかで少し傲慢でもあると思う。
ひとの気持ちを直接触れることができそれが治療の基本になるのが在宅医療であり、それゆえ、人肌を感じることができるのが在宅の醍醐味でもある。
今後も訪問診療アシスタントの力も注ぎながら多くの考えを取り入れ、人に触れるような訪問診療にしたいと思います。

 

令和5年7月:いしづかクリニック 
院長 石塚 俊二

いしづかファミリークリニックロゴマーク