医療法人社団ファミック
いしづかクリニック
web予約をする
TEL予約・お問合せ
0798-44-3315

西宮市の内科|いしづかクリニック-院長ブログ|40脱GDPと医療

院長ブログ
いしづかクリニックHOME院長ブログ一覧40 脱GDPと医療

院長ブログ

当クリニック院長 石塚俊二が医療を中心に情報発信
一覧ページを見る

40 脱GDPと医療

2023年もそろそろ終わろうとしています。
今年は新型コロナウイルス感染症も徐々に収束に向かい、世界全体に活気を帯びてきているような気配を感じています。
一方、ウクライナなやパレスチナなど各地で悲惨な戦争が起きて医療とは真逆の罪ない人々が毎日、命を落としていることも現実である。このような中で医療はどこに向かいどのように進んでいくだろうとふと考えることがある。

先日、ニュースで日本のGDPが2022年は世界第3位であるが、これからは日本国内の経済発展の要素が乏しく、4位のドイツ、5位のイギリスなどヨーロッパに抜かれて衰退の一路となる可能性があり、危機的な状況を迎えると経済評論家が言われていた。

経済評論家のイメージイラスト

 

GDPとは“国内総生産“を指し、一定期間に国内で生み出された付加価値の総額である。
付加価値とは簡単に言えば”儲け“である。商品やサービスによって発生した儲けがGDPの基本である。
1人あたりのGDPが高ければ高いほど所得も高くなる。生活が豊かになるということだ。
逆に、国家のGDPが大きくても1人あたりのGDPが低ければ、国民が豊かな生活を送れているとは言いにくい。
今、GDPという指標は時代に合わなくなっているとも言われています。それはGDPでは、ほんとうの意味での豊かさを測ることができないからです。
そもそも、GDPとういのは環境を壊しても戦争でもプラスになってしまいます。
しかしある人が森に住み、自分でログハウスを作り、畑を耕し、釣りをして魚をとり時給自足の生活をしたら、GDPはゼロとなります。新たなモノやサービスが生み出された背景は関係なくなってしまうため、その多様性は示さないと考えられているからです。

 

現代の人の生き方は多様性に溢れており、幸福感も人それぞれだと思います。それを一つの物差しで測ることに疑問を感じます。その、代表が医療だと思います。
例えば、高血圧や脂質代謝異常の患者さんには「健康を維持するために、できるだけカロリーを少なく粗食を目指し、1駅ぐらいなら電車や車をできるだけ使わず、自転車や徒歩で通勤してください」とアドバイスします。
これが実践されるとその人の幸福感につながります。しかしこの行為はGDPには加算されません。
そもそも、医療のゴールは命であり、健康になりたいというその人に合った目標があり気持ちと身体の問題だけである。

 

人間が健康になるということと日本の経済が豊かになるということに個人では、あまり相関がないのではと感じます。
どんな立場の人も、家族や友人と楽しい会話が楽しめたら、それ以上の多くの物質的なものは必要ないのではと思う。
実際、私も医師という職業の中で経済、ましてやGDPなどというものを実感がないのが事実である。
むしろ社会や国が豊かになると、人間が逆になるかもしれないとも思います。もちろん貧しい国や人々が豊かになってくると貧しいがゆえに健康を害し、病に陥っていくことがなくなり健康は改善される。しかし、一定の基準を超えてしまうと豊かになるということと幸福になるということは関連性がないと思う。

 

NO GDPのイメージイラスト

例えば、ワーカーホリックの私もそうであるが猛烈に働き、家族や友人と一緒にいる時間を大幅に犠牲にすることは実は幸福にならないかもしれない。GDPの増加だけを目指す豊かなものをより豊かにするという考え方は、誰も幸福にしないのではとも思うこともある。
医療には市場原理は当てはまらない。在宅医療で終末期の患者さんをみているといつも思う。その人の人生の価値に経済は必要ない。数字では表せない。その人の気持ちが豊かで満足する人生を過ごせたかをどのぐらい表せるかが大切である。
まさにNO GDPである。その医療というのは単に病を治すだけではなくて、人間の心の痛みや、社会の痛みを癒す場でなければならないと思う。医師は、そうした使命をその人を知りながら果たしていく。
コミュニティのなかに埋め込みながら、その人の社会と共に癒しの、悲しみの分かち合いをするというのが医療だということを明確に位置づけないといけないと感じる。時代がどうのように変わっても、医師の使命は変わらないであろう。
2024年にもこの考えは変わらず医師を続けていくと思う。

 

令和5年12月:いしづかクリニック 
院長 石塚 俊二

いしづかファミリークリニックロゴマーク