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44 心の受容について

私の専門領域のひとつに免疫疾患という病気があります。
本来、免疫系は自身の体に入った病原体である非自己に対してそれを貪食して排除する働きがあり、自分自身を攻撃することはありません。これを免疫寛容と呼びます。
この免疫にはもともと体に備わっている自然免疫と後天的に備わっていく獲得免疫があります。特に、獲得免疫は異物に応じた攻撃方法を記憶する後天的な仕組みで一度かかった病気にはかかりにくくなります。
どちらの免疫も体内への異物に対する生合目的な防御反応のひとつであります。でも病気は心と体の両方から成り立っており、普段の生活においても人の心に対する防御機能はどのようになっているのかと思うことがあります。


アルフレッド・アドラー課題の分離人は生きて行く中で様々な悩みやストレスを抱えて生活しています。

ともすれば、このストレスに打ち負かされて心が病んでいき生き生きとする生活を失ってしまうこともあります。この状況をどのように考え乗り切っていけばよいのでしょうか。


フロイトやユングと並ぶ方でもある心理学者のアルフレッド・アドラ-がその答えのヒントを与えてくれています。
アドラ-の心理学によると、まず“人間の悩みはすべて対人関係の悩みに由来する”ということを強く訴えています。その中でこの悩みを解決する方法に、一つは“課題の分離”です。
これは誰の課題なのかという視点から自分の課題と他者の課題とを分離していきます。そして、他者の課題には踏み込まない、他者は切り捨てるということになります。
なぜなら、対人関係のトラブルの多くは他者の課題に踏み込むこと、あるいは自分の課題に踏み込まれていることが起きていると考えられているからであります。一見、人に対して冷たく接するような感じにもならないかと考えますが、他者の課題に踏み込まないことにより裏切りを怒れることなく、他者へ無条件に信頼を寄せている、自分の仲間だと思うからこそ切り離していると考え、その自分をありのまま受け入れることができる、つまり“自己受容”が最重要であると説明されています。


例えば、宿題をしない子供に宿題をしなさいと言う方も多いと思いますが、勉強はこども(他者)の問題であり、こどもからすると自分の課題に踏み込まれていると思っています。
親にできることは、宿題をしやすい環境を整えることを考える程度でありそれがこどもの為に役立っていると自己受容することが大切であるという考え方になります。自己受容自己受容は、ありのままの自分を受け入れ、行動や所有物に左右されない、自分の存在そのもののことです。

 

時に“友達よりも勉強ができないから自分はたいしたことはない”“恋人に見捨てられたくないから、自分を犠牲にして尽くしてしまう”“親のように立派な職に就けないからどうせ自分はダメだ”“結果を出している人を見ると、すごいな、自分はできないな”など思ってしまうこともあります。でもこれは、人は行動や所有物で自分を判断してしまうことが多いためにでてくる気持ちで、“自己受容ができていない”からの感情であると考えます。
自分の価値を認められていないから、自分以外の人に対して自分の位置を下げてしまって、自分勝手にしかも無駄に苦しんでしまっていることだと思います。


“自分なら○○ができる”という暗示に近いもの、つまり“自己肯定”を消し去る必要があります。
自己受容は自己肯定とは全く異なるもので、自己受容は“できない自分”をすべて受け入れてあげること意味します。

ありのまま生きて行くなら“できない自分”にも価値があると認めてあげる必要があるのです。
言い換えると、自己受容とは“できない自分を受け入れる強さ”を手にいれることでもあります。
自分の価値を人にゆだねず、自分で決めるようにするのです。そして自己受容がでてくると、今度は他者受容もできるようになってきます。行動や地位に捉われず、その人自身を受容し好きになれるようになってきます。

 

在宅終末期の自己受容医療においてもこの自己受容は重要であると思います。
医師も医学知識をもとに患者さんに“~であるべき”“~すべきではない”と考えがちで、それに合わない治療結果に悩み、落ち込むこともしばしば遭遇します。
医師だけが独りよがりで強いストレスを感じることもあります。
しかし、在宅終末期の患者さんのほとんどは、最期を迎えるとき病気に対してすべてを受け入れ、治療を超えて自己受容をされ天寿にむかっているように思います。
最後は自己受容によって、その人の世界は一変し、人生が楽にそして楽しくかったと心から思っているということをわかっているのだと思います。最後は誰でも人は“自己受容”しているのだと思います。

 

令和6年4月:いしづかクリニック 
院長 石塚 俊二

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