48 音楽を聴くこと
人はどんな時に音楽を聴いているのでしょうか。
楽しい時はもちろん、悲しいときや落ち込んだときなど様々な機会で日常として聞いていると思います。
そして医療の中でも音楽は不可欠だと思う。音楽には、私たちの心や精神や認知に働きかける力があると言われています。また音楽にはストレスや不安の軽減、痛みの軽減、免疫力向上、記憶力の向上、運動習慣の補助などの効果もあると言われています。好きな音楽やゆったりとした音楽は聴く人が抱えているストレスや不安感の軽減につながります。
医療的な場面の例で言えば、分娩室でゆったりとしたテンポの音楽を流すことで妊婦のストレスや不安を和らげたり、MRIを使用する際にも音楽が薄く流されている事例もあります。
また最近の研究では、未熟児のICUに音楽療法士が関わることで対象の未熟児の機能向上につながるという結果が出ています。 音楽を聴くことは、患者さん側のみならず医療者側にも大きな効果をもたらすと多いと思う。
僕は仕事で煮詰まったときや治療に苦慮したりするときは自然に好きな音楽を聴くことにしている。通勤中や往診の移動中など自然に音楽を欲してしまう。自分に悩みや辛さがあればあるほど音楽をより聴くことが日課になっている。
音楽を聴くと何故かその出来事がすっと頭から離れて気持ちが素直になり、今度は、その出来事を客観的に冷静にとらえることできる感覚になる。
そして、決断することに勇気がでる。そんな感覚になるのが好きである。
その音楽の選択は、自分の心の状態によって聴く曲も違っている。
例えば、心が落ち込んだ時や選択が迫ったときは、マライアキャリーの“Hero”やホイットニーヒューストンの“Greatest Love of All”などを聴いて自分の気持ちを鼓舞することが多い。また、患者さんのことや治療に苦慮したときは、松任谷由実さんの“瞳を閉じて”“卒業写真”や玉置浩二さんの“メロディー”などでどういうわけか邦楽でスローテンポな曲を聴きたくなる。気分を爽快にしたいときは、ブルーノマーズの”Treasure””24K Magic”や”Versace on the Floor”と決まっている。
また、最近は子どもに教えてらったサカナクションの“忘れられないの”“新宝島”やOfficial髭男dismの“Pretender”、”I LOVE・・“”Subtitle“など時代に遅れないように聴いて子供と音楽談義をするのも楽しい時間である。
最近はYou tubeがあるので、自分で検索していたときにラップは全く知らないが、偶然知ったクレバさんの“音色”もより元気になりたいときには聴くことがある。このように、医療者も音楽が仕事の助けになることも多い。
では、患者さんにとっての音楽とはどのようなもので、なぜ、音楽は医療に必要なのであろうか。
音楽には様々な効果があるが人体に何らかの影響を与えているのだが、その一つと言われているのが“音楽を聴くと体が無意識に動いてしまう”ということだ。つまり、簡単にいうと“ダンス”である。
ダンスは音楽に合わせて動くものであり、ある程度慣れた人であれば音楽を聴くだけでダンスの振り付けを思いついて動き出す人もいるし、小さい子供は音楽を聴くだけで教えてもいないのに体を激しく動かす場合があったり、町の書店街を歩いて好きなBGMがかかるとそのテンポに合わせた歩調になったりすることもある。
では、なぜ音楽を聴くと人の体は動くかというと“音楽が体の動きを誘発するからだ”と言われています。
そもそも音楽には3拍子や4拍子などの一定のリズムやルールが存在しており、人間は音楽を聴くと、その中にあるルールを無意識に理解するようになっている。
そこから“このリズムはこのような動き”と体を動かして確認するという特徴があり、この特徴こそが誘発されている証だと考えられているようだ。音楽によって体を動かすメカニズムは様々な分野で活用されているが、最も注目を集めているのが音楽療法と呼ばれるものだ。
音楽療法とは子供から高齢者まで幅広い年代に利用されている医療的な治療方法であり、一種のリハビリテーション療法として利用されている。特に小さな子供や高齢者に敏感に反応しやすく音楽を利用することによって、幅広く健康維持や、心のケア、痛みや認知症など心身のケアに利用されています。
医学的には、音楽がもたらす健康への効果は
またその音楽療法の種類も能動的・受動的音楽療法や個人・集団音楽療法などもあります。
ただ、僕自身、音楽によって体を動かすことにより本当は心が動かさることであり、薬や注射と同じようにその音楽の作用によって心の免疫を通じて病気が治癒に向かうことを示しているのではと想像しています。
そう言えば、高齢者の患者さんが毎日、カラオケに行っていると聞いたことがあって、それが生活のルーチンになっていると楽しそうに話していたことを思い出した。この患者さんのカラオケは、確実に治療の一環であったのだと思う。
将来、その人のこれまで聞いてきた音楽の中からこの病状ではこの曲の効果があるなど音楽の処方箋ができるかもしれないほど医療の中での音楽は重要であり、純粋な医学だけではなくもっと多様な治療が進んでいくこと期待しています。
令和6年8月:いしづかクリニック
院長 石塚 俊二