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50 才能と努力について

最近、テレビをつけると毎日のようにアメリカメジャーリーグ野球の大谷翔平選手の話題が取り上げられているのが目に付きます。大谷選手は、もちろん今世紀まれにみる偉大な選手であり、世界のスーパースターの一人であることに異論を唱える人はいないだろう。また、大谷選手以外でも、イチロー選手もそうだし、サッカー界ではメッシやクリスチアーノロナウド選手も天才と呼ぼれるほど才能の持ち主である。
特にスポーツや芸術の分野ではよく“才能”という言葉を耳にします。
では、いったい“才能”とはどのようなもので、どうすれば得られるものなのかをいつも思う。そして、”努力”は”才能”を勝ることができるのかとも思います。

 

才能と努力についてのイメージイラストほとんど多くの人は”才能”は生まれ持ったものであり、いくら”努力”しても得ることはできない資質と考えられているのではないでしょうか。しかし、調べてみるとこのような概念とは少し違った考え方を述べている人もいます。
“才能の科学”という著者のマシュー・サイドさんは、“才能は幻想である”と言われています。
スポーツ選手の驚異的な反射神経や運動技能は先天的なものではなく後天的に獲得されてものであると。
例えば卓球界で世界的に優れた選手であるデズモンド・ダグラスは反射神経のテストをしたところ、ナショナルチームで最も鈍かったそうです。
実は、スポーツ選手の驚異的な反応の秘密は認知機能の発達にあると言われています。長年の経験の積み重ねによって、脳に蓄積された大量のパターンから、素早く状況を解析し、意識せずとも最高の意思決定をできる、つまり、優れた動きができると考えられています。

 

また、スポーツでも「神童」と呼ばれる子どももいますが、彼らは非凡な才能を持っていたのではなく、非凡な育ち方をしていることも大きな影響を受けていると言われています。
例えば、ゴルフ界のタイガー・ウッズは2歳の頃からゴルフの英才教育を受けていました。また、音楽界でもモーツアルトも3歳から作曲と演奏の練習を始め、6歳になる頃には、3500時間もの練習をしていたと言われています。
圧倒的な練習時間の量、そして優れた指導者のもとで練習を重ねたことが、実は神童と呼ばれる技能を生み出しているのかもしれないということです。
一流になるために必要なのは才能ではなく練習時間や持続する努力であり、それを証明する研究結果はスポーツや音楽などさまざまな分野にあります。ただし、闇雲に練習をすればいいというわけではないようです。
質の低い練習を続けても意味がなく、やるべきは“目的性訓練”と呼ばれる練習です。これは少しばかり力が及ばなくて実現しきれない目標を目指して励むことであり、また、現在の限界を超える課題に取り組んで、繰り返し達成に失敗することとされ、進歩は必然的な失敗から生まれるという考え方です。
例えば、音楽。同じ音を吹き続けるロングトーンの世界記録で、ある音楽家が60秒というすばらしい記録を出して、これでそろそろ限界だろうとみんなが思っていました。
そこに、ケニー・Gという僕も大好きなサックス奏者は循環奏法という画期的な方法を発明した。鼻から息を吸いながら口から一定量の息を吐き出し続ける奏法で、驚くべきことに45分間という記録を打ち立てることに成功したのです。
傑出した能力の獲得には長期に渡る練習が必要です。前述の大谷選手も仲間との食事会も避け野球に24時間没頭していると言われています。つまり、“奇跡を起こす人は一瞬のひらめきに頼っていない”ということがわかります。

 

「自分には語学の才能がないから」「自分は数学向きの頭をしていない」「スポーツにはそもそも向いていない」などよく耳にする話だと思います。でも、“目的性訓練”の立場からいうと、創造的なイノベーションはかなり一貫したパターンをたどることで“目的性訓練”の苦難から生まれるものです。
エキスパートは、自分の選んだ分野にとても長いことひたっているために、創造的なエネルギーが充満するとでも言いかもしれない。別の言い方をすれば、ひらめきの瞬間は青天の霹靂ではなく、専門分野に深く没頭したあとに湧きおこった高潮であると考えられています。そしてそれに必要なモチベーションを維持し続けるためには、マインンドセットの違いが重要です。

 

才能と努力についてのイメージイラスト

一般的に思いがちな「知性や能力は生まれながらに決まっていて変えることができない」そんなマインドセットではモチベーションの維持はできないようで、また、失敗や挑戦を恐れ、成長するチャンスを逃してしまいます。
今の世の中では“努力”を続けることは、疎んじられる傾向にありますが、“努力し継続する”ことは決して悪いことではないように思いますし、少し勇気づけられます。
医療現場でも、医師である私も“もうこれ以上の治療の改善は見込めない”“考えつくしたがこれ以上は本人の治癒力に任せよう”と自分を納得させることも頭によぎることがあります。だか、治療も医師の努力次第でもあります。
“患者さんを良くするのは努力でも変えられる”という、そんなマインドセットこそが必要で、長期のモチベーション維持が必要と思うとなんでも耐えられるように思います。

 

令和6年10月:いしづかクリニック 
院長 石塚 俊二

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