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55 孤独について

2023年死亡原因順位大人になっても孤独を感じたことは誰にでもあると思う。人間関係は人生にどのように影響するのか。
“一人で生きることは必ずしも悪いことではないが、長引く孤独によって心身の健康に悪影響を及ぼし、後悔や悲観に暮れる末路をたどる可能性がある”という記事を読んだことがある。
また、2023年の政府の調べだと孤独死、孤立死は、約8万6000人程度で、死亡原因順位にあてはめると、悪性新生物(腫瘍)、心疾患、老衰、脳血管疾患に続く5番目に多い数字であり、もはや孤独死や孤立死が疾患名と定義されてもおかしくないようなスピードで増加しているのには驚く。

 

社会的孤立による脳への刺激の減少や主観的なつながり不足による孤独感の状態が長期化すると、認知症の発症リスクが上昇することが報告されている。つまり、慢性的な孤独感や孤立は認知症の発症を増加させ、死亡率も高めることになるということだ。

会話をしているシニア男女イラスト現在、科学的にこの大人の孤独や孤立の研究を担う精神科医、ロバート・ウォールディンガー教授は、長期的な幸福感や健康に最も大きな影響を与える要因は良質な「人間関係」であると結論付けている。
そして、信頼し、信頼される善き人間関係こそが、健康長寿の秘訣であると語っている。
具体的には、

  1. 親愛なる友人との会話や交流は、ストレスを和らげる。
  2. 困難な時期において、信頼できる友人がいることで安心感を得られる。
  3. 良好な人間関係を持つ人は、心臓病や認知症のリスクが低い。また、心臓病や糖尿病、関節炎などの発症を抑制し、健康で幸福な老後に大きく影響するとしている。

しかし、孤独や孤立がすべて悪いものでもなく人生においてはそれを自然に受け入れていくことも必要であると思う。
人生は移ろいゆくものであり、私たちの人間関係もまた、年齢やライフステージによって変化してゆく。
生まれてしばらくの間、私たちの人間関係は親や祖父母、兄弟など肉親に限られていく。
それが小学、中学となると、親から離れて家族以外の人を頼り、兄弟以外の仲間と戯れる喜びを知るようになる。
さらに高校、大学と、学生期にはステージが変化する度に新しい友人との出会いがあり、共通の趣味や活動、バイトなどを通じて、多方面に関係が広がってゆく。
一方、社会人になると、仕事中心になり、かつての友人たちとの関係が希薄になる。さらに家庭を持つと、家族と過ごす時間が中心となり、仕事以外で新たな友人を作る機会も限られてくる。
やがて子どもが独立し、定年を迎えて仕事を離れ、活動や行動の範囲も狭まってくると、家族以外の人間関係がどんどん薄まってゆく。

今の私はこの状況であり、子供は独立し、仕事と家族以外では、大学時代の数人の同級生と会う以外は新しい人と出会うことは少ない。これから先、さらに老い、病み、配偶者を失ったりすれば、強烈な孤独感に苛まれるようになると思う。
仏教では、「無常」という言葉がある。無常とは「あらゆる事象は変化し続ける」という、ブッダの教えたこの世の真理であり、人間関係にも当てはまる。
“生→老→病→死”と人生のステージが、死に近づけば近づくほど、友人が減少することや孤独を感じることは避けられない現象である。だからこそ、それを受け入れる心を育むことが大切なのだ。
孤独時間は自己を見つめ直し、内面的な成長を遂げる貴重時間だと考えることもできると思う。
静寂の中でこそ、自己を見つめ、真理を見つめることもできるからだ。
“ひとり”だからこそ成長する好機であるとも考えられることもできると思う。
孤独を憂うのではなく、孤独を活かすことだと思う。

例えば、今まで自分の時間を持てなくて過ごしてきた人もいるだろう。だけど、人生の“無常”の中では必ず孤独や孤立する時がくるだろう。そのような時には自分自身の時間を大切にして、本当にやりたいこと、趣味や興味を追求できる時間と考え、仕事や家族、その他の人間関係に縛られることなく、自分の望むライフスタイルや価値観に従って、自由に余生を謳歌することができると考えれば良いと思う。医師と患者さんの会話をしているイラスト
それを体現している患者さんもいる。外来診察で私がいつも感心、目標とする患者さんがいる。
75歳を超えた男性ですが、先に奥さんに先立たれながらも、家事の掃除、洗濯、料理をすべて自身で行い、仕事場での弁当もすべて自分で作る。
仕事もほぼ毎日フルで働き、さらに好きなゴルフも月2回程度、いつも面識のない、言わば初めての会員さんとラウンドをして人生を謳歌しているのだ。
私が、「一人で食事や洗濯は大変でしょう」「仕事も夜遅くまでしてお弁当も作るのはしんどくないですか」「ゴルフも毎回、知らないメンバーさんとするのは緊張しませんか」つい心配なことを口にするのだが、
「そんなことないですよ、毎日やっていますから」「もう慣れていますから、ゴルフも知らない人話すと、同年代の病気のことや生活の仕方も教えられることがあって楽しいですよ」と淡々と平然に話さされるのを聞くと孤独や孤立を感じて憂う気持ちも人によって様々だなと毎回感じて感心するのである。

 

孤独や孤立には種類があり、その孤独が、自分勝手な振る舞いが過ぎて、他人が離れていってしまった結果である場合もある。あるいは他人との関わりが煩わしいからという理由で、自ら周囲との関係を断ち切った結果である場合もある。
人間関係に限らず、あらゆる命や物事は相互に関係しており、その関係の上に私たちの人生が成り立っている。
この「ありよう」を、つまり「縁」と呼ばれるときもあるが、孤独の中でも、私たちは他者とのつながりの中で生きており、その縁を大切にすることが幸福につながるのだと思う。
年齢を重ねることによって、友人関係が減少するのは自然なことであるし、一人で生きることが必ずしも悪いわけではない。
時には孤独を受け入れ、それを自己成長の糧とすることが大切である。しかし孤独や孤立を感じる年齢になっても、人生のどんなステージにおいても、他人に対して慈悲心をもって接しているならば、近くには必ず、信頼できる良好な人間関係が築かれているはずだと思う。
私たちは人生の中でさまざまな縁に恵まれている。縁に揉まれながら、縁の中で自分自身を見つめ直し、少しずつでも、少しでも、善き人間関係を築いていくことが、健康的で幸福な人生を歩む鍵となるのだと思う。
私もいつも自然のまま、”孤独“を受け入れることができればと思っている。

令和7年3月:いしづかクリニック 
院長 石塚 俊二

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