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56 人生を生き抜くための適応戦略

2023年死亡原因順位4月は言わずと知れた新年度の始まりを迎える特別な月です。

新たな環境に飛び込む学生や新社会人にとって、期待と不安が入り混じる時期でもあります。しかし、しっかりとした準備と心構えがあれば、新しいスタートを前向きに迎えることができると思います。

今回は、このような新社会人の方、転職された方など新しい環境に置かれたときに人はどのよう振り舞うべきなのかを考えるときの1つのヒントとして“適応戦略”についてお話ししたいと思います。

 

一般的に社会における“適応戦略”とは、企業や組織が固定化された計画に固執するのではなく、業務の推進にともなって立ち現れてくる機会や脅威に適応するために、柔軟に対応し、調整することで目標を達成するという考え方です。物事の不確実性が高く、将来の予測が困難であると言われる現代では必要な考え方かもしれません。

私たちは事前の計画が綿密で詳細なものであればあるほど、業務はスムーズに進むと考えがちです。しかし、実際の結果はその真逆で、事前の計画に時間を費やせば費やすほど、プロジェクトの進行は遅くなり、生産性やサービスの競争力も低下すると言われています。

私のクリニックでも同様のことを経験しています。
数年前、診療のIT化や効率化を目指し、オンライン診療や自動精算などを取り入れました。この際に今までの診察の開始から終了までの方法が大きく変わり、年齢層によっての導入説明の差などの問題点を何度もシミュレーションを重ねました。この時、少しの問題でもあれば立ち止まりそれを完璧に解決しようと試みる結果、予想以上にどんどんと導入が遅くなるようなり、最後は導入しないほうが良いのではないかとも考えるようになりました。
会話をしているシニア男女イラスト実際に導入した後は、確かに問題点は現われてくるのですが、導入した効率性のほうがはるかに優り枝葉末節的な問題はすぐに解決できることがわかりました。
成功するプロジェクトは、仮説に基づいて大まかな計画を作った上で、プロジェクトの進行に従って明らかになっていく結果に従って修正を加えて、乗り越えることのほうが簡単であり、また、その問題点が逆にさらによい効率性を見せることもあることに気づかされました。
私たちは、当初想定した計画がうまくいかないことを“失敗”と考えがちですが、想定した計画がうまくいかなかったということは、“想定した仮説の誤りが検証された”と考えることもできると思います。医療の世界では“絶対に治療は失敗してはいけない”という考えがあるので、それをクリニックの業務や運営にすべてを当てはめるとまったく的外れであることも多いということも知りました。これは人生も同じだと思います。人生も“適応戦略的”の繰り返しです。
私もこれまで、以前のブログでお話したこともありますが、医師になってからいろいろと勤務先を変えてきました。

新しい場所、つまり勤務先が変わったときに、その“適応”について、いつも心がけていることがあります。

まずは、

1.長期計画の重要性です。

自分は新しい病院の勤務に基づき、最初にキャリアのビジョンを明確にして目標設定をしました。まず、この病院でどのようなキャリアを築きたいか、そのためにはどのようなスキルや経験が必要かなど大まかなロードマップを作っておりました。
パソコンでいうと“初期設定”で、キャリアの叩き台のようなものです。

次に

2.インシデントへの適応です。

インシデントとはあと一歩で事件や事故につながる状況です。これは患者さんの治療においても、職場の人間関係においても起こります。そしてこれらのインシデントの特徴は自分では予想していない、できないことで発生します。全く考えもしないことが次々に自分の身に降りかかってきます。
例えば、私の場合など東京で勤務を希望しながら、静岡や埼玉などの地方の病院の勤務を並行して6,7年間従事させられ時間の余裕がなく仕事以外に時間がなく精神的にも追い詰められていたことなどが思い出されます。

こういった予想していない変化に柔軟に対応できる能力が求められますし、受け入れて取捨選択することを求められます。逆にそのまま自然に受け入れることで何とかなることも覚えました。

そして最後は

3.再評価と調整です。

インシンデントに適応しながらも定期的な自己評価が必要です。
医師と患者さんの会話をしているイラスト自分の仕事の何がうまく行って、どの部分の改善が必要か、自分の長期のビジョンの目標に向かって正しい方向に進んでいるかを定期的に検討し、必要に応じて計画を調整することが重要です。

“適応戦略”では、一般的に“失敗”と考えられるようなこともチャンスとして捉えます。ただしそのためには、その“失敗”が致命傷にならないようにしなければいけません。そして“失敗”をちゃんと把握し、フィードバックを得て、そこから学び、長期計画を修正していくということが大事であると述べられています。

また、長期計画があり、最終的に到達したいゴールや、そこに至る大まかな道筋があるからこそ、想定外の出来事や環境変化に対して敏感になれるのです。
“適応戦略”という考え方は、私たちの人生そのものです。私たちは自分の強みや興味関心を先見的に知ることができません。

私たちの人生は膨大な仮説な集合体です。その仮説をひとつひとつ検証し、破棄・修正することでしか前へ進んでいけないと考えられます。当初に想定した人生の計画を頑なに守り続けるのではなく、想定外の機会や状況変化に対して、開かれた、しなやかな姿勢を持つことが、人生の適応戦略を実践する上でのカギになるかもしれませんね。

令和7年4月:いしづかクリニック 
院長 石塚 俊二

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